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LIFE SHIFT を読んだ

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

大筋としては、人間の平均寿命は10年ごとに2年ペースで伸びており、これから人類皆100年時代に突入する。その上で必要なのは有形無形の資産で、そのために学習・労働・老後の3ステージでなくそれらをミックスしたマルチステージな人生が求められる。というもの

前著のWORK SHIFTはマルチステージの働き方そのものにフォーカスした内容で、こちらも読み物として面白かった。

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

さて、この本全般的に耳に痛い話が多い。今後人類がより長寿化していくことや、それに対しての年金制度の崩壊、老後資産の不足といった内容を数字とともに説得力のある形であげている。そして、それに備えるのに必要な事をあげている。納得できる内容だし、理解もできるのだが、全般的に共感はできない。個人的に気に入らない箇所が結構ある。

まず気になるのは、ケーススタディの都合の良さ。マルチステージな人生の有効性を解くため、3ステージの人生とマルチステージの人生を対比させて論じているのだが、後者がどうにもうまく行き過ぎているように思う。数字的な根拠や論文の引用もあるが、このパートはそういう部分が少ない。自分の論がまずあって、そこに向かって希望的な根拠を積み上げているような印象を受ける。そうなってくると、イギリスのハイソな大学教授の妄言なのでは? みたいな思いもある。

とはいえ、マルチステージの必要性それそのものは納得できる。また、実際すでにマルチステージなキャリアを歩んでいる人も少なくない。社会人大学院なんかに行く人だとか。書き方がわざとらしいだけで、シナリオがまるっきり嘘っぱちとは言えないだろう。

もう一つ、無形資産の考え方が合わない。ワーク・シフトでも思ったが、リンダ・グラットンという人は新しい働き方を説きながら、人生観は従来のままで一面的ではないかという疑問がある。ワーク・シフトの第三章、日々リモートで同僚と仕事を進める人の事を、生身の人間と会話がない寂しい人と言ってのけた。その人が何に喜びを持ち生きていくかはその人の物だろう。無形資産の話についてはそういう論調で話が進むこともあり、どうも居心地がよくない。

まぁ色々コンフリクトはあるものの、この本がまるっきりの妄想かという事もなさそうで、十分に読み応えがある。今後余命が長くなっていくのに対して、生き方も変えていく必要があるという事実からは逃れられない。明日いきなり死ぬかもしれない事を考えるのと同じように、もしかして100歳まで生き残ってしまう事も考えないといけない、と感じる。

しかし、重い気分にさせられる本だった。